ドクター木村の教えて甲状腺
若松河田
豊洲
COLUMN

橋本病の特徴や原因、症状や診断、治療法について

橋本病の特徴と原因とは

橋本病は自己免疫異常の原因によって起こる病気で、甲状腺に慢性的な炎症が発症するものです。ウイルスや細菌から体を守るために抗体をつくる自己免疫作用のなかで自分自身を攻撃する異常な抗体をつくりだすことによって起こる病気のひとつです。自己免疫異常の疾病で甲状腺の病気というとバセドウ病が有名ですが、バセドウ病が甲状腺機能亢進症と呼ばれるのに対し、橋本病は甲状腺の機能が著しく低下する対極的な病気として知られています。病名には、発見者や報告者の医師の名前がつけられることがよくあります。この病気も世界で初めてこの病気に関する論文を発表した医師の名前にちなんでつけられたものです。バセドウ病と同様に、自己免疫異常が起こる原因については未だ明らかにされていません。この病気は20代後半からよくみられるもので、特に30代、40代の罹患率が高いとされています。バセドウ病以上に女性が罹患する率が高く、男性の20倍から30倍ほどと言われています。児童期、学童期には滅多に罹患することはありませんが、まれに髄膜炎から甲状腺ホルモンの分泌の低下がみられることもあるので注意が必要です。
この病気は、甲状腺が異常なものであるとみなすことによって産生された抗体が正常な甲状腺の細胞を刺激することによって起こるものです。甲状腺の炎症によって分泌される甲状腺ホルモンの量が減るため、代謝が低下し体中にさまざまな症状を引き起こすことになります。全ての患者が甲状腺の機能低下がみられるわけでなく、甲状腺に生じる炎症が軽度である場合は甲状腺の機能が正常という患者もいます。一般的な割合で示すと、明らかな甲状腺機能低下の症状がみられる患者は全体の10%ほど、ほとんど症状がみられない軽度の甲状腺機能低下の患者が20%ほどです。残り70%ほどの患者は甲状腺機能が正常であるため、病院で確定診断を受けないとこの病気に罹患していることがわからないこともあります。

橋本病の症状とは

橋本病は、甲状腺の腫れのほか、代謝の低下でさまざまな症状がでるため自分で病気を確定することは難しいものです。手や顔のむくみ、喉が腫れて声がかすれる、などの症状は疲れや風邪などと誤解してしまうことも多いでしょう。そのほか、皮膚の乾燥、寒さに弱くなるものの暑さを感じることがなく発汗することが少なくなる、食欲は落ちるがむくみのために体重が増加することがある、腸の働きが衰えるため膨張感があったり便秘になったりする、などの症状がみられます。代謝が低下することによって、心臓の働きも低下し脈が遅くなったり、活動意欲がなくなったりもします。さらに、思考力が低下して常に眠くなったり、動作が緩慢になったりという症状がみられる方もいます。意識や気分の低下がみられることから、うつ病などの精神的な疾患として誤診される可能性も高い病気ともいえるものです。「何となくやる気が出ない、食欲がない、朝起きにくい」と症状を訴えて、すぐにこの病気が浮かぶ医師は少ないでしょう。原因がよくわからない症状に長い間悩まず、早目に甲状腺専門医がいる病院を受診することをおすすめします。
この病気は、患者の約7割が甲状腺の機能が正常な状態であるため、発症していても全く症状が出ないこともあります。さまざまな自覚症状だけがあるので、なかなか周りに理解されにくい病気であるとも言えるでしょう。やる気のなさ、怠惰、精神的な落ち込みなどと判断されて、心無い言葉をかけられたことが原因で深刻な精神疾患を患うことも考えられます。また、日本人は基本的に真面目で頑張り屋の気質であるため、自分だけで抱え込んで我慢に我慢を重ねてしまうことも多いものです。治療すれば症状は徐々に消えて何よりも体が楽になります。

橋本病の診断と治療法とは

橋本病のように甲状腺異常が考えられる患者に対しては、血中の甲状腺ホルモンの量を測定する検査を行います。甲状腺ホルモンには複数の種類がありますが、この病気の場合はその全てが低下するところが特徴です。また、血中の甲状腺ホルモン濃度が低いため、脳の下垂体から甲状腺ホルモンを出すように指令を送るために分泌される甲状腺刺激ホルモンの量は多いというのも大きな特徴として認められます。また甲状腺を異物とみなして攻撃する自己抗体である抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が陽性であることもこの病気の判定材料です。甲状腺がんなどを疑う場合は、甲状腺の組織の一部を採取して検査することもありますが、痛みを伴うため鑑別検査が必要となった場合のみ行います。
橋本病の治療は、投薬治療が主なものとなります。自覚症状や甲状腺の腫れが認められても、甲状腺ホルモンの分泌量が正常な場合は、甲状腺の大きさやホルモン量のチェックを年に1、2回程度行い経過観察で特に治療は行いません。その際に甲状腺ホルモンの低下がみられる場合には、補充療法を行います。投薬治療では、甲状腺ホルモンの量を正常値に近づけるために合成甲状腺ホルモンを使用しますが、1日1回の内服薬なので苦痛をともなうものではありません。長期にわたって根気よく服薬することが必要となりますが、効果が出れば体全体の不調が改善されていくので仕事や日常生活での意欲や活力を高めることができます。

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