ドクター木村の教えて甲状腺
若松河田
豊洲
COLUMN

甲状腺の病気のタイプや種類、悪性度の高い癌について

甲状腺の病気の種類とは

甲状腺は、喉仏のすぐ下にある小さな臓器です。小さな蝶が羽を広げるようにして気管を包みこむように位置しており、普段は手で触っても確認することはできません。重さにすると20g程度の小さなものですが、発育や新陳代謝に大きな影響を及ぼすホルモンの分泌に関わる大切な臓器です。人間の体には性ホルモンや副腎皮質ホルモンなどのさまざまな種類のホルモンが分泌されています。ホルモンを分泌するものを内分泌器官と呼んでいますが、甲状腺もそのひとつで飲食物として摂取したもののなかからヨウ素を材料としてホルモンをつくります。何らかの異常があると、結節部にしこりができて腫れるため手で触っても確認することができるようになります。甲状腺の病気には、ホルモン分泌の働きが変化するもの、臓器の形状が変化するもの、細胞が癌化するものの3つの特徴があると言えるでしょう。病気によってはひとつの特徴だけではなく、複数の特徴が同時に現れることもあります。
ホルモン分泌の働きの変化に関するものとしては、ホルモンが過剰に分泌されることによって代謝が異常に高まる亢進症や反対にホルモンの分泌が低下するものがあります。形状の変化に関するものとしては、臓器の炎症による腫れやしこりができるもの、臓器がそのままの形で肥大化するものなどがあります。喉の前面の腫れやしこりなどの形状の変化に気づいて専門医を受診することが多く、その時点では病気の種類もわからないことが多いものです。さらにそのなかで細胞が癌化しているものは鑑別検査を行わないと確定診断はできません。また、ホルモン分泌異常という機能面の異常では、代謝に関するさまざまな症状があるため風邪や胃腸炎、精神的な疾患などととらえて見当違いの病院を受診することもあります。異常を感じたら早目に専門医がいる病院で検査を受けることが大切です。

甲状腺の主な病気の種類

甲状腺の形状の変化によって気づく病気には、さまざまなものがあります。単純性びまん性甲状腺腫は、全体的な腫れは認められるものの、炎症や腫瘍は認められず機能面でも異常が認められないものです。成長期によくみられるもので、腫れ以外の自覚症状もなくこれといった治療の必要もありません。将来、悪性腫瘍などへ変化する可能性を考えて定期的に検査して経過観察すれば問題はないでしょう。ホルモンをつくる働きに異常がみられるものとしてバセドウ病と橋本病がよく知られています。機能異常としては対極の関係にあるとも言える病気で、バセドウ病の場合は、ホルモンが過剰に分泌されるのに対し、橋本病ではホルモン分泌の低下が認められるものです。
ホルモン分泌の異常は、新陳代謝に大きく関わって体にさまざまな症状を発症させることがあります。新陳代謝が過度に活性化されるバセドウ病では、食欲が旺盛なのに体重が増えない、興奮状態や落ち着かない状態が続き疲れやすいなどの症状が現れます。一方、代謝が低下する橋本病では、食欲が減退するがむくみのために体重が減らない、気分が落ち込みがちでうつ病に間違われることがあるなどの特徴がみられるため、バセドウ病とは対照的な症状であると言えるでしょう。どちらも血液検査によって血中のホルモン量を測定することで診断することが可能です。問診や触診だけでは確定診断をすることが難しいため、早目に専門クリニックなどで検査を受けて客観的なデータから判断することが望ましいでしょう。病気の種類にかかわらず、投薬治療、手術、放射線、薬物治療などのいくつかの治療方法があり、一般的には長期にわたって内服薬で治療するのが一般的です。

悪性度による甲状腺の病気の種類

日本人の死亡原因のランキング上位を常に占めているのが癌です。大腸がんや胃がん、肺がんなどの死亡率が高くなっています。甲状腺による病気のなかにも癌がありますが、死亡率に換算すれば癌全体のわずか1%程度の低いものです。甲状腺の癌には、大別して5つの種類があります。一般的に悪性度が低く進行が緩やかで自覚症状をほとんど伴わないという特徴がありますが、なかには例外として手術などを行っても予後がよくないものもあります。
ほとんどの癌は、全体の90%近くを占めると言われる乳頭癌です。悪性度が低く進行も緩やかでリンパ節切除手術によって生存率も高いものです。悪性度の高いものとして未分化癌があります。喉の痛みや声のかすれなどの自覚症状を伴うとともに、骨や他の臓器にも転移しやすいものです。進行速度も速く放射線治療や抗ガン剤療法が行われるものの、生存率が高くはないものとして知られています。また、橋本病を長年患っている方がなりやすい癌として悪性リンパ腫があります。中高年の女性に多いのも特徴で腫れによって気管が圧迫されて呼吸困難に陥ることもあり、手術の効果があまり期待できないため放射線や抗がん剤による治療が主となります。
甲状腺の病気は男女を問わず発症するものではありますが、圧倒的に女性が罹患する確率、悪性度が高まる確率が高いものです。精神的な症状や更年期障害の症状などと見誤ることも多いため、病院が提供するチェックリストなどを参考にしながら、早目に専門医のいる病院で相談、検査することをおすすめします。

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