【甲状腺専門クリニック】 バセドウ病、橋本病、甲状腺癌(がん)、その他の甲状腺疾患などの専門クリニックです。
甲状腺はのどぼとけのすぐ下にあり、縦4センチ、厚さ1センチ、重さ15gほどの小さな臓器です。蝶が羽を広げるように気管を包み込む形をしており、通常はとても柔らかいので外から触っても分かりません。ただ、風邪などで腫れてくると手で触ることができ、外から見ても分かるようになります。甲状腺は、食べものに含まれるヨウ素からホルモンを作り、血液中に分泌します。
甲状腺ホルモンの働きは大きく分けると3つあると考えられています。1つは細胞の新陳代謝を活発にすることです。脂肪や糖分を燃焼させてエネルギーを作り出し、全身の細胞の新陳代謝を促進します。また、新陳代謝で得られたエネルギーで体温を調節します。心臓や胃腸の働きを活性化し、脳にも作用してその働きを活性化します。2つ目は交感神経を刺激することです。交感神経が刺激されることで、脈が速くなり、手が震えることもあります。3つ目は成長や発達を促すことです。母親の胎内で胎児が成長するとき、子どもが正常に成長し、発達するために甲状腺ホルモンは必要不可欠です。さまざまな働きがある中で、主に全身の代謝を高める役割があると言えます。ホルモンの分泌は多すぎても少なすぎても体に不調が現れます。私たちの体には分泌量を一定に保つための甲状腺刺激ホルモンがあり、血液中のホルモン分泌量のささいな変動も見逃さず、常に一定量を保つような働きをしています。この機能については血液検査によってその量を量ることができます。
分泌量が体内で増えると必要以上に働きが活発になり、全身の代謝が高まります。落ち着きがなくなり、疲れやすく、体がだるくなり、運動をしていても記録が伸びないということが起こります。汗をよくかくようになり、暑がりになります。脈拍数が100~120と多くなり、動悸がして手足に力が入らず、指先が震えたり、息切れがしたりします。食欲が旺盛になり、よく食べるのに空腹を覚え、喉が渇き、イライラして眠れなくなります。さらに髪の毛が抜けたり、爪の先が白くなったり、排便の回数が増えて下痢症状が出たり、体のかゆみや微熱が続いたりする症状も見られます。眼球が大きくなって目つきが鋭くなり、症状が重くなると飛び出してくることもあります。
一方でホルモンの分泌が不足すると心身の働き全体が低下しますが、初期の段階では症状があまり出ないことも多く注意が必要です。疲れやすさやだるさは同じですが、汗をかかなくなり、寒がりになります。加えて、脈拍数が少なくなり、動作が鈍くなり、筋力が低下します。食欲も低下し、あまり食べていないのに体重は増加し、気力がなくなり、物忘れすることが多くなります。髪の毛が抜けるのは同じですが、便秘がちになり、皮膚がカサカサに乾燥して青白くなり、むくみが全身に現れ、まぶたや唇、口の中の粘膜がむくむと顔全体が腫れぼったくなります。そして、眠気を覚えて声がかれてきます。どちらにしても甲状腺が腫れてきます。これらの症状に当てはまるものが4つ以上ある場合は、一度血液検査を受けることをおすすめします。
甲状腺の異常時にはホルモンが多い、少ない、おできができた状態の3つに分けられます。甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になった場合は甲状腺中毒症という病気があります。体重減少、全身の倦怠感、手のふるえ、動悸や息切れ、脈が速くなり、暑さに耐えられなくなるという症状が現れます。何らかの原因で甲状腺が破壊され、ホルモンが血液中に漏れて中毒症を引き起こす、またはホルモンを含んだ薬の服用によって中毒症になることがあります。発症例として、やせ薬の中にホルモンが含まれておりダイエットは成功しても全身の倦怠感や動悸の症状が起きるということが実際にありました。
他にも、中毒症の中で甲状腺の機能が働き過ぎることで起きる甲状腺機能亢進症などがあります。代表的な疾病例としてはがバセドウ病や、腫瘍がホルモンを分泌するプランマー病などが挙げられます。。
甲状腺ホルモンの分泌量が減少した場合に起こる症例として、甲状腺機能低下症という病気があります。原因として多いのは、甲状腺が破壊されて起きる原発性の機能低下症や、脳下垂体から分泌されるTSHが不足することで起きる中枢性の機能低下症などがあります。女性の場合、出産後に一過性の軽度の機能低下症になることがあり、その場合は治療の必要はありません。
甲状腺におできができた場合、その約9割は良性の腫瘍で、、がんを併発していなければ手術の必要がなく、多くは経過観察となります。約1割は悪性の腫瘍でがんも含まれますが、他の臓器と比べて進行が緩やかで、治療により完治しやすいケースが多くなります。これらの疾病は他の病気の症状と間違われやすく、機能低下症は肝機能障害の症状が出ることがあり、肝臓の治療をしても良くならないということが起こります。他にも更年期障害やうつ病、認知症、躁うつ病、糖尿病、貧血などと症状が似ているため、間違われやすいので、治療をしても症状が改善しない場合は甲状腺の疾患を疑ってみることが大切です。