【甲状腺専門クリニック】 バセドウ病、橋本病、甲状腺癌(がん)、その他の甲状腺疾患などの専門クリニックです。
バセドウ病は、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが過剰に作られることで全身の代謝が高まる自己免疫疾患のひとつです。1840年にこの病気を研究発表したドイツ人医師の名前にちなんで名づけられました。アメリカやイギリスでは、この病気について報告したイギリス人医師の名前にちなんで「グレーブス病」と呼ばれることもあります。バセドウ病は、甲状腺機能亢進症と同一、あるいはそれを代表する病気の1つと言われることもありますが、厳密には異なるものであるとされています。病気を発症する確率は1000人中2から6人程度と言われており、女性患者が男性患者の5倍ほどの割合となっています。発症する年齢としては20歳から50歳代が多く、なかでも30代、40代の発症率が高いとされています。
バセドウ病は、ウイルスや細菌が体内に侵入してきた際の免疫の働きと深い関係があります。花粉症やアナフィラキシーショックのように自分自身を攻撃する抗体が作られることで引き起こされる病気を自己免疫疾患と呼んでおり、バセドウ病もそのひとつなのです。自分自身を攻撃する自己抗体、TSHレセプター抗体TRAb、TSAbが甲状腺を刺激することによって甲状腺からホルモンが過剰に分泌されます。現段階では、これらの自己抗体が産生できる原因が解明されていませんが、罹患者の15%程度が家族内に同じように発症している人がいることがわかっていることから、遺伝的な要因が深く関わっているのではないかと言われています。また、複数の要因が関係して発症するとも考えられており、出産などで体内環境が大きく変化する際に発症することもわかっています。特徴的な症状や診断の方法があるため、異常を感じたらすぐに診断を受けて適切な治療をすることが大切です。
バセドウ病と聞くと眼球が大きく飛び出す症状をイメージすることが多いですが、実際眼球が大きく飛び出すのは3割程度で、甲状腺機能異常のために全身にさまざまな症状が現れるのが一般的です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると全身の代謝が異常に活性化されるため、食欲が衰えることや空腹感が喪失することがほとんどなく、食べ過ぎるほどに食事の摂取量が増えます。それに比例して体重が増えるだけでなく、年齢が上がるにつれて痩せてしまうこともあります。新陳代謝が活発になるため常にジョギングなどの運動をしているような状態になり、脈拍が速く、中程度以上の運動をした時と同じような汗をかくのもバセドウ病の症状の特徴です。暑さを強く感じるようになり、微熱程度の発熱を伴う場合もあります。何もしていないのに運動をしているような状態が続くので疲れやすくなるのも特徴です。腸の動きも活性化されるため、排便の回数が多くなる人もいます。
精神的には、イライラ感が強くなったり、怒りっぽくなったりして落ち着きがなくなります。いつも元気がみなぎっていて活発に見えることもありますが、本人にそのような意識はありません。1日中、動悸を感じるようになり、手足が震えて文字を書くなどの日常生活にに支障が出てきます。病気が進行すると全身の震えが出ることもあり、注意が必要です。顔つきや目つきがきつくなることもあり、落ち着きのない精神状態から精神疾患を疑われる場合もあります。眼球が突出する症状は、特に喫煙者に多いという統計結果が出ており、タバコが甲状腺に与える影響が大きいことも報告されています。
甲状腺機能亢進症の診断では、甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの血中濃度の検査を行います。甲状腺ホルモンの分泌に何らかの異常があることはこの検査結果から判断できますが、バセドウ病の診断を行うためには、原因物質である自己抗体 TRAbの有無を検査する必要があります。バセドウ病であってもまれにこの検査で陰性という結果が出ることもあり、その際は他の甲状腺疾患と区別するために放射性ヨード摂取率を測定することもあります。眼球が突出し始めた際に、目の異常と勘違いして眼科を受診した場合は、バセドウ病を起因とする眼疾であるか否かの検査をして確定診断を行うので、最初に眼の異常を感じて眼科を受診しても見逃すことはないでしょう。
この病気は甲状腺の働きが活発になり過剰に甲状腺ホルモンが分泌されることが原因であるため、治療はホルモン分泌の抑制が主な目的となります。主な施術・治療には、手術、アイソトープ治療、抗甲状腺薬治療の3つがありますが、重症化していなければ、まず抗甲状腺薬の投与を始めて様子をみるのが一般的と言えるでしょう。内服薬の服用を始めると1ヵ月ほどで甲状腺ホルモンの量が低下し、2ヵ月ほどで正常な状態になるのが一般的です。本人には完治したかのような自覚症状がありますが、実際にTRAbが消失するのは2から3年後となるため、それまでは自覚症状がなくても薬を飲み続ける必要があります。投薬治療で功を奏さない場合には、甲状腺の一部を残して甲状腺全摘手術を受けるか、アイソトープ治療で放射性ヨードを投与して甲状腺を壊すかのどちらかとなります。内服薬での治療も長期間にわたり、他の治療に切り替えるタイミングなども難しいため、早期の段階から甲状腺専門医を受診することが望ましいでしょう。